バッハ 3声のシンフォニア 第4番



2声のインベンションの練習がすべて終わって何年かしてから、3声のシンフォニアに手を付けた。今ではインベンションの方はすっかり忘れてしまい、1曲たりとも弾けなくなっているが、はたしてこんなに難しかったろうか。2つの手で3つの旋律を作ろうとするのだから複雑なのはあたりまえだが、私の頭が年をとってしまったためも大きかろう。指がいっこうに曲を覚えてくれない。この曲に手を付けてから、途中で止まることなく最後まで弾けるようになるまで、半年以上かかっている。

そんなに手間がかかる曲をやろうとするのは、バッハの音楽がおもしろいからだ。鍵盤楽器の初学者のためにバッハが書いたインベンションの音楽的な高さときたら驚くべきものだ。機械式の腕時計の構造のように、複雑でありながら自由であり、緻密でありながら無駄がない。そして1曲1曲が小さな宇宙になっている。弾いてみるとそれがよくわかる。一流のピアニストのレコーディングが幾種類もある、こんな教則本は他に思い当たらない。

3つの各声部がそれぞれが命を持って動きまわるのが最終目標なのだけれど、とても私には無理なようだ。難しいなあと思うたび、バッハ自身が下手な弟子に言ったという「一所懸命練習してごらんなさい。きっと巧く行きます。あなたにだって、私と同様、両手に五本ずつ丈夫な指があるのですから。*」というのを思い出し、自分もバッハになぐさめてもらっている。


*バッハの生涯と芸術 フォルケル著 岩波文庫1988 p198

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