若冲の動植綵絵を見て その4

  「なぜ水に触れることができないのかしら。私は死んでいるので、何も感じることができないのでしょうか。」 「いえ、自分の体に触ることはできるでしょう?つねったら痛いでしょう?だからあなたは死んではいないのです。人は誰しも、自分の心の中にあるものしか見ようとしません。これはあなたの心の中を流れる川なのですよ。」 群れをなして…
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若冲の動植綵絵を見て その3

翌日から私の境遇は一変しました。私は要領が悪くてほかの方の足手まといになるばかりか、掃除したはずの場所にゴミが残っています。すぐに目が悪いのが知れてしまいました。主人の顔つきは険しくなり、不具のものはいらない、村に帰れと暇を出されてしまいました。取り付く島もありませんでした。 私は困りました。宿場町の店を片端から訪ねまわりましたが、誰…
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若冲の動植綵絵を見て その2

隠居後の若冲はどんな生活をしていたのか。さらに私は想像をめぐらしてみた。 京都の家は門口が狭く奥行きが長い。中央には採光と通気のための中庭がある。若冲はその中庭に羽のきれいな鶏を集めて飼育場にしている。朝の時を告げることから始まって、甲高い鳴き声やらバタバタする羽音それに争い喧嘩騒ぎで一日中やかましい。あちこちが糞便で汚れて羽根が…
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若冲の動植綵絵を見て その1

 平成二十八年の四月から五月にかけて上野の東京都美術館で伊藤若冲の展覧会があった。若冲は近年になって特に注目されるようになった江戸時代の絵師で、展覧会では代表作である「動植綵絵」三十幅が「釈迦三尊図」三幅と共に展示されるとのことだった。これはめったにない企画で、開催前にNHKが数回にわたり若冲の特集を組んだほどだ。番組ではアイドルグルー…
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ラヴェル クープランの墓から フーガ 

 (自宅で収録。ペダル踏みすぎ。)  フランスの作曲家ラヴェルが第一次世界大戦後発表した6曲からなるピアノ曲集で、それぞれの曲が戦死した友人たちに捧げられている。そのうちの4曲はのちに管弦楽に編曲されている。なお、邦訳は「クープランの墓」であるが、「クープランをしのんで」といったほうが元の意味に近い、とのこと。  ラヴェ…
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フェデリコ・モンポウ その2

フェデリコ・モンポウ  その2   (その1からのつづき) アンジェラスの鐘が鳴り響くある日の朝、街路樹が茂る通りを隔てた二つの家で、男の子と女の子が同時に生まれた。泣き声を聞きつけた近所の人が集まってきて歓声を上げ、無事の出産を祝ってとっておきの葡萄酒をあけた。ワインを入れたグラス片手に花や食べ物などを持って双方の家に押…
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フェデリコ・モンポウ その1

フェデリコ・モンポウ その1 モンポウ(1893-1987)はスペインのカタルーニャ地方出身の音楽家である。バルセロナに生まれ、若いころはパリで学びすごし、後半生はバルセロナに戻った。作曲したそのほとんどが短いピアノ独奏曲で、それに歌曲や少々の室内楽しか残していない。長い戦争の時代を生きたにもかかわらず、声高に自分の意…
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仕立て屋と青ひげ   その2

            仕立て屋と青ひげ    (その2)  仕立て屋は勢いよく店の玄関扉を開け、立ちすくんだ。そこにはふだん見慣れた汚ない通りはなかった。足もとから鮮やかな茶色や黄色や紫色によってモザイク状に彩られた地面が広がっていた。先ほど壁を通して見ていたはるか先の地平には、小高い丘の上に建つ城の、真っ黒な影があった。 「…
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仕立て屋と青ひげ  その1

               仕立屋と青ひげ (その1)  昔、ある町に仕立屋が住んでいた。長い年月を、死んだ父親から譲り受けたちっぽけな店ですごし、なじみ客相手に仕立ての仕事をしていた。古くなった看板は傾いて色が剥げ、入り口扉はがたつき、壁には長年の汚れが模様を作っていた。店の中には一人にしては広すぎる作業台、雑然と物が…
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シューベルト 即興曲 op142-2

シューベルト 即興曲 op142-2  この曲は1827年の12月に作曲されている。1797年生まれのシューベルトは1828年11月に没しているから、シューベルトの晩年の曲ということになる。晩年と言っても若干30歳で、普通ならば人生はまだ始まったばかりと言っていい若さである。晩年のシューベルトは梅毒を病んで体調がすぐれず、この…
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牧谿 遠浦帰帆図  その2

     (牧谿 遠浦帰帆図  (もっけい えんほきはんず) その1からの続き)  風は順風で、波を切りながら面白いほど速く船は進んだ。これは幸先がよいと商人は言った。湖の小島の脇をすべるように通り過ぎ、その日の夕刻には湖が長江に流れ込むほとりの町についた。舟を乗り換えるために二人は降り立ち、次の船を待つ間その町に逗留することにな…
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牧谿 遠浦帰帆図  その1

       牧谿 遠浦帰帆図  (もっけい えんほきはんず)  その1  2014年の秋に三井記念美術館で 東山御物の美 という展覧会があり、私はそこでこの絵を見た。 http://www.kyohaku.go.jp/jp/syuzou/meihin/chuugoku/item07.html       古い水墨画である。…
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バッハ 3声のシンフォニア 第4番

2声のインベンションの練習がすべて終わって何年かしてから、3声のシンフォニアに手を付けた。今ではインベンションの方はすっかり忘れてしまい、1曲たりとも弾けなくなっているが、はたしてこんなに難しかったろうか。2つの手で3つの旋律を作ろうとするのだから複雑なのはあたりまえだが、私の頭が年をとってしまったためも大きかろう。指がいっこ…
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シューベルト即興曲 D899 第3番

 シューベルトを聞き出したのは小学校の頃だったから、私にとって一番なじみ深い作曲家だ。今年はシューベルトをピアノで弾いている。昔一度弾いたことのあるこの曲を今回習い直し、録画はしてみたもののとにかく下手。なんともひどいのだが、「心あまりて、ことば足らず」なのだと自分を慰めている。(在原某の場合は,悪口を言っているようでその実褒め…
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ヘレン・シャルフベック

ヘレン・シャルフベック  東京芸術大学大学美術館でヘレン・シャルフベックの展覧会が開かれていた。この画家の名前は今回初めて知った。1862年から1946年まで生きたフィンランドの画家である。      フィンランドに行ったことはないのだが、好きな国である。シベリウスやメラルティンなど、お気に入りの作曲家がいる。国土をおおう森と…
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森の中の塔

 果てしなく続く深い森があった。木々は節くれだち、ねじれ曲がって、互いに絡み合った枝には緑の葉が密にかさなりあっていた。さえぎられた陽の光は弱まり、森の底に着くころは真昼でもうす暗かった。空気は湿り気を帯び、霧がたちこめてくれば何も見えず、ただ梢から落ちてくる水滴の音だけが聞こえていた。  年老いた木が命尽きて闇の中へ倒れると、森のあ…
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ブラームス インテルメッツォ op117-2

ブラームスが弾きたくて1年間練習した。前半は作品119-1。一時はなんとなく弾けるようになっていたのだが、人前で演奏する機会もないうちにいつしか弾けなくなった。この117-2は発表会で弾くために、今年(平成26年)後半で練習した。私はあがり症なものだから、舞台でライトを浴びての演奏はミスのしまくりで惨憺たるものになった。でもしろうとの…
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弱法師(よろぼし) 下村観山 (その4)

  (その3からの続き)  梅の花は散り、私はその後毎日のように四天王寺の西門あたりに出かけ、弱法師の消息をたずね歩きましたが何の手がかりも得られませんでした。そう言えば最近見かけないねえ、どこかで死んだんじゃないの、と言われるのが関の山で、しばらくすると弱法師のことも忘れられてしまったようでした。息子を探し出す手立てはなくなった…
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弱法師(よろぼし) 下村観山 (その3)

   (その2から続く)  そんなことの間に、私の店の方でもいろいろごたごたがありました。こんなことをあなたに聞かせても仕方がないが、先代が亡くなった後、店を二分する騒動になりましてな。あのわがままな妻と番頭が組んで、店を乗っ取ろうと企てたのです。その頃には私もだいぶ自信をつけていまして、決して許しませんでした。先に手を打って確た…
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