テーマ:思い出す人たち

立原道造 萱草(わすれぐさ)に寄す  その3

    またある夜に      立原道造   私らはたたずむであらう 霧のなかに   霧は山の沖にながれ 月のおもを   投箭のやうにかすめ 私らをつつむであらう   灰の帷のやうに   私らは別れるであらう 知ることもなしに   知られることもなく あの出會った   雲のやうに 私らは忘れるであらう   水脈の…
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立原道造 萱草(わすれぐさ)に寄す  その2

              ユウスゲ もしくはわすれぐさ(萱草)              この草を胸に抱いていると憂いを忘れるという      はじめてのものに      立原道造           ささやかな地異は そのかたみに   灰を降らした この村に ひとしきり   灰はかなしい追憶のやうに 音立てて …
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立原道造 萱草(わすれぐさ)に寄す  その1

詩集 萱草(わすれぐさ)に寄す   SONATINE No.1     はじめてのものに                 ささやかな地異は そのかたみに   灰を降らした この村に ひとしきり   灰はかなしい追憶のやうに 音立てて   樹木の梢に 家々の屋根に 降りしきつた   その夜 月…
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Mさんのこと

 咳が止まらない、といってMさんは私の外来にきた。80歳の落ち着いた雰囲気の老人で、髪も眉も白かったが、表情豊でおしゃべり好きな方だった。人の話は相手の顔を見ながらじっと聞き、おだやかに自分の意見を言うさまは、やりたいことはもう十分やってきた者の持つ余裕を感じさせた。  長い期間にわたる咳だったので胸部レントゲン写真をとってみると、右…
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Yさんのこと

 これは私が1年目の研修医であった時の、もうかれこれ30年近く前の話だ。  まだ一般の人たちに昔ながらの医師に対しての尊敬が残っていて、医療不信の報道もほとんど無く、コンピューターも普及していない、今から思えばのんびりした時代だった。そのころは携帯電話もポケットベルも無かったから、医師は病院内や自宅にいない限り連絡がつかなかった。…
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