弱法師(よろぼし) 下村観山 (その2)

    (その1からの続き)  何年かたったある時、私は幼い晴徳丸が庭にしゃがみこんで何かに熱中して描いているのに気が付きました。近づいてみると、枯れ枝で地面に絵を描いているのです。何か動物の形とか、木や草や人の顔などが地面にびっしりと書かれていました。きっと誰からも相手にされず、一人でずっと絵を描いて遊んでいたのでしょう。それが…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

弱法師(よろぼし) 下村観山 (その1)

 日本画家下村観山、本名晴三郎は明治6年和歌山市の生まれである。下村家は代々紀州徳川家に仕える能楽の家系であったのだが、明治維新後は禄を失い観山8歳の時一家で上京する。幼くしてすぐれた画才を示し、狩野芳崖、橋本雅邦に師事、13歳の時の絵をフェノロサに賞されるほどであった。横山大観とともに岡倉天心率いる東京美術学校第一期生として入学、その…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

立原道造 萱草(わすれぐさ)に寄す  その3

    またある夜に      立原道造   私らはたたずむであらう 霧のなかに   霧は山の沖にながれ 月のおもを   投箭のやうにかすめ 私らをつつむであらう   灰の帷のやうに   私らは別れるであらう 知ることもなしに   知られることもなく あの出會った   雲のやうに 私らは忘れるであらう   水脈の…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

立原道造 萱草(わすれぐさ)に寄す  その2

              ユウスゲ もしくはわすれぐさ(萱草)              この草を胸に抱いていると憂いを忘れるという      はじめてのものに      立原道造           ささやかな地異は そのかたみに   灰を降らした この村に ひとしきり   灰はかなしい追憶のやうに 音立てて …
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

立原道造 萱草(わすれぐさ)に寄す  その1

詩集 萱草(わすれぐさ)に寄す   SONATINE No.1     はじめてのものに                 ささやかな地異は そのかたみに   灰を降らした この村に ひとしきり   灰はかなしい追憶のやうに 音立てて   樹木の梢に 家々の屋根に 降りしきつた   その夜 月…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

ジャン・シメオン・シャルダン その3

     (その2から続く)  私は信じていたいの。これからはきっといいことがある、すてきなことはかならずやってくるって。毎日毎日がつらくて、泣きたくなるようなことがいっぱいあって、家に帰っても一人ぼっち、しょんぼり座っているだけにしても、私は信じていたいの。こんなにひどい日ばかりじゃない、やけをおこしてみたところでどうに…
トラックバック:0
コメント:1

続きを読むread more

ジャン・シメオン・シャルダン その2

 (その1からの続き)  さあうまくいったぞ。簡単なもんだ。これで今夜も楽しめる。ちょっと金額は少ないが、まあいいだろう。これだけあれば、芝居を見て、飲んで、カードをやって、今夜こそ一山あてるぞ。仮面をつけてしまえば完璧さ。俺はなんだってできる。なんだってやってみせる。  まったく女というものはバカだ。こちらが大胆に…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

ジャン・シメオン・シャルダン その1

 シャルダンという画家がいる。18世紀フランスの宮廷画家で、果物やガラスコップの描かれた静物画、子供をたしなめる母親などの人物画など、忘れがたい絵画を残している。派手なところは全くない画家なので、大きく取り上げられることはあまりなかった。フランス革命前のルイ15世の時代に生きて、王の信頼厚くアカデミーの会計官、サロンの展示職にま…
トラックバック:0
コメント:5

続きを読むread more

亡き王女のためのパヴァーヌ  その7

  (亡き王女のためのパヴァーヌ その6からの続き) 「ほんとうに、これでよかったのですか。もう少しいらしてもよかったのに。」 「いや、いいんだ。これで終わったんだ。」 「気が済んだのですね。思い残すことはもう、何もないのですね。それでは最初のお約束通り、参りましょうか、私の国へ。自由の国、なんでも望みがかなう国。これから迎え…
トラックバック:0
コメント:5

続きを読むread more

亡き王女のためのパヴァーヌ  その6

  (亡き王女のためのパヴァーヌ その5からの続き) ・・・・・・マ・メール・ロア・・・・・・・  青い瞳を閉じて、お姫様はお城の塔の中で眠りはじめました。それはまるで水の中に沈みながら夢を見ているようでしたが、ふと水面に浮きあがるように目を覚ましました。でもとても眠かったので、ふたたび目を閉じて眠りの中に沈んでいき、夢…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

亡き王女のためのパヴァーヌ  その5

   (亡き王女のためのパヴァーヌ その4からの続き)  王女は笑いながら町の中を歩いていく。ラヴェルは煙草をふかしながら後からぶらぶらついていく。道の傍らは大きな建物の石造りの壁が続いていたが、そこに小さな木の扉が現れる。王女はその前で立ち止まり、侍女に扉を開けさせる。ラヴェルをそこに招き入れ、くぐるようにして一行が入ると、そこ…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

亡き王女のためのパヴァーヌ  その4

  (亡き王女のためのパヴァーヌ その3からの続き)  足音は部屋の前で止まった。ドアノブが回り、静かに扉が開いた。先ほどの娘であった。近くで見るその娘は薄化粧をして美しく、服装は絹の光沢があって思いのほか豪奢であったが、それでいてほんの14,5歳にしか見えなかった。娘は部屋に入ってくるとラヴェルににっこりと微笑みかけ、ふたた…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

亡き王女のためのパヴァーヌ  その3

  (亡き王ののためのパヴァーヌ その2からの続き)  1932年10月ラヴェルはタクシーに乗っていて事故に会い、軽い脳震盪を起こす。けがはごく軽いと思われたのに、これが彼の頭に何らかの微小な脳損傷を与えたのだろう、動作はぎこちなく日常生活がままならぬほどとなり、誰の眼にもその異常は明らかになった。  ラヴェルの病状について…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

亡き王女のためのパヴァーヌ  その2

   (亡き王女のためのパヴァーヌ  その1  からの続き)  戦後あちこちを転々としていたラヴェルは自分の家を持って落ち着きたいと考えるようになる。46歳の時(1921)、パリ近郊のモンフォール・ラモリという古い町にある家を購入する。奇妙な形をしたその家は住むには不便であったのだが、10世紀の城の遺跡がある丘の中腹に建っていて、…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

亡き王女のためのパヴァーヌ  その1

         モーリス・ラヴェル(1875-1937)  ラヴェルが作曲した「亡き王女のためのパヴァーヌ」をピアノで弾いていた人の記憶がある。もう30年以上も前のことなので、それが誰で、どこで弾いていたかなどは忘れてしまった。ただ、いいなあ、こんなふうに僕もピアノが弾けたらよかったのになあ、とうらやまし…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

飛騨の円空

 東京国立博物館に 飛騨の円空展 を見に行った。  日本の広い地域にまたがって、独特の荒い彫り跡を残す仏像が残っている。一見雑な作りで、普通の仏像を見慣れた目には完成されたようには思えないが、それでいてなかなかあじわいがある。それは信じられないほどの相当数に上るのだが、驚くべきことに円空という僧侶がたった一人で彫ったものらしい。そ…
トラックバック:0
コメント:3

続きを読むread more

エジプトファラオの永遠の命 その4

   (その3からのつづき) テサケウム達がじっと待つ場所に、ラー神の船が次第に近づいてきた。巨大であった。大きな船に、神殿がそのまま乗っていた。ラーの船が水を切って進むと、波は星々できらめいた。 テサケウムは息をひそめた。見張りのたくさんの神々がはっきりと見てとれる。しかしテサケウム達に気づいてはいない。ラーの大船はテワケウム…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

エジプトファラオの永遠の命 その3

  (その2からの続き) ネフベト神は声を発した。耳の鼓膜が破れんほどの大音響であった。翼を広げ、次第に体がふくれあがって巨大になっていく。神殿が大きく震え、天井の石材が崩れた。1回の羽ばたきで神殿は砂埃に包まれた。大王の不肖の息子たちは、雲の子を散らすように神殿から走り出ていく。 巨大なネフベト神は不気味な声をあげながら羽ばた…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

エジプトファラオの永遠の命 その2

   (その1からの続き)  数多くいる王の子供の中に、テサケウムという名前の息子がいた。いつも宮殿のなかの薄暗い図書館にいて、パピルスばかり読んでいた。大王の図書館は巨大であった。大王の力で集められるだけ集めた記録、書物、粘土板、石板が数十の部屋に分かれて保管がしてあり、さらに次々と運び込まれる資料の山で、図書館専門の何名もの書…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more