シューベルト即興曲 D899 第3番



 シューベルトを聞き出したのは小学校の頃だったから、私にとって一番なじみ深い作曲家だ。今年はシューベルトをピアノで弾いている。昔一度弾いたことのあるこの曲を今回習い直し、録画はしてみたもののとにかく下手。なんともひどいのだが、「心あまりて、ことば足らず」なのだと自分を慰めている。(在原某の場合は,悪口を言っているようでその実褒め言葉なのだと思うが、自分の場合はぜんぜん褒められない) やりなおそうとは思うのだがこんなものでも録画は大変だったので・・・

 弾いてみて一番大変だったのは中声部の分散和音で、右手の親指から薬指という手で一番力が強い指を、お行儀よくそろえなければならなかった所。半年練習しても制御できなかったのは明らかで、がたがたしていて聞き苦しい。それにつられて小指1本でひくメロディーも、杖を突いてよろける老人の足取りで、情けないこと。もう若くはないし、練習にはきりがないので、この辺であきらめることにした。今では次のD935の第2曲に取り掛かっている。

 シューベルトの和声とか転調はこの人独特なもので、後世の作曲家には真似のできないものだったように思う。この曲の場合は2小節目、主旋律が同じ音をターンタンタンと3つ繰り返した後の和音である。
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右手小指の旋律が同じ音なのに、左手が変わる、なんとこれは短和音で、曲の中間部のドラマチックな短調の出だしと同じ和音なのである。
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短調の和音が長調の旋律の中に突然入ってくる、その意外性と説得力に弾くたびに驚かせられる。有名な歌曲アヴェ・マリアの最初の主旋律の最後の「a」の音の和音も短和音で、初めて聞いたときには度肝を抜かれたが、それと同じような衝撃である。
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楽譜の版によっては、冒頭旋律がくり返されるところが別の和音になっていて、この版を使っているプロの演奏を聴くたびに、「なんてもったいないことを、シューベルトの和音が台無しじゃないか。」と思ってしまう。
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 これはシューベルトの楽譜を最初に出版した 出版社の勝手な改ざんであったらしく、この部分のほかにもト長調に移調し、2分の4拍子を2分の2拍子にしてしまったのだそうだ。明快な響きを持つト長調よりもこのフラットをつけられるだけつけた変ト長調のほうが夢みるようなこの曲の雰囲気にマッチしているのにきまっている。出版社のハスリンガーはとんでもない人だ、と後世では非難されているわけだが、世の中には変わったピアニストもいるもので、この変な楽譜を使っている人がいる。

リヒテルのすばらしい演奏なのだが、普通の演奏を聞いた後で聴くと、どこか変だ、と誰でも思うだろう。それもそのはず、ト長調なのだから。リヒテルは晩年聴覚障害に悩まされていたそうなので、それが影響していたのかどうか。

 私が使った原典版なので、正当な楽譜を使っているわけだが、版がどうのこうのという以前の問題である。こんな演奏に付き合わされた人はそれでも
「お上手ですね。」
などと言ってくれる。さらに
「プロ並みの腕前ですね。」
などと。嘘だとわかっていても、言われた方はうれしいものだ。

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